クルド難民の日本語教室〈川口芝クルド日本語教室〉

開講日

 月・木・土曜日(1日あたり3-4時間程度)

 144 回開講(2022 年 5 月〜 2023 年 9 月実績)

場 所

 埼玉県川口市 ( JR「蕨」駅近くのシェアスペースとカフェの 2 拠点で開講)

参加者

 86人〈幼児 / 小学生 28 人、中高生 30 人、成人 28 人〉

 (2022 年 5 月〜 2023 年 9 月の参加者実数)

上の写真は、毎週木曜日の教室の様子です。カフェの一角をお借りして教室を開いています。カフェは書店やイベントスペースにもなっていて、お客さんや近隣住民の方が頻繁に出入りします。

少し騒がしいようなこの場所であえて教室を開いているのは、自然な形でクルドの子と地域の住民が出会ってほしいと考えているからです。

丁寧な学びの支援

 あるクルド人の小学生のケースをご紹介します。Aさんという小学校高学年の子どもは、算数が苦手です。小数や分数の計算を学校で習っていても、実は1桁の引き算もうまく答えられないことがあります。Aさんは小学1年生の時に来日し、当時は日本語が全く分からなかったため算数の授業が聴き取れず、授業内容が理解できていなかったことがいまだに影響している可能性もあります。ただ、それだけでなく、発達に特性があるかもしれないと講師たちは見立てています。しっかりとした検査を受けたことはありませんが、ゆっくりと学んでいくタイプであることは確かなようです。

 このように、日本語を母語としない子どもの学習は複雑です。第二言語で学ぶハンディ、発達の凸凹、色々なものが混ざり合ってその子の個性を形成します。そこに寄り添い、伴走する大人がそばにいることは、きっとその子どもにとって大きな力になることと思います。皆さまにいただいたご寄付で、こうした丁寧な支援を続けられることに改めて感謝申し上げます。

▲ 上の写真は、来日して約10年がたつクルド人小学生のノートです。幼少期から日本の学校で教育を受け、日本語で日本のことを学んできています。その積み重ねを無視して日本から強制的に追放するよりも、このまま日本で幸せに成長してくれることを応援したいと願います。

クルド難民と新たな「在留特別許可」制度

 私たちが学習支援を行っている埼玉県に暮らすクルド人の子どもたちは、その多くがトルコなどの政府による民族迫害から日本に逃れてきた難民申請者の家族の子です。難民申請中は特別な在留資格(「特定活動」)が与えられますが、難民申請が不許可になった場合には正規の在留資格を失い、健康保険加入・就労・県境をまたぐ移動などが認められない不自由な身分(仮放免状態)となってしまいます。健全な育ちを阻害するそのような制度は子どもの最善の利益に反するばかりか、人権の侵害に当たると国内外から多くの指摘を受けてきました。

 それを受け、日本政府は2023年8月、「日本で生まれ育った在留資格のない外国人の子ども」に対して在留特別許可を与える方針を発表しました。これにより、数十人、あるいはそれ以上のクルド人の子どもたちが安定した在留資格を得て、日本で暮らす道が開かれたことになります。多くの支援者らはこれを評価し、クルド人のコミュニティでも喜びの声が聞かれています。

 一方、今回の在留特別許可に求められる要件に該当しないクルド人の方々や支援者からは、悲しみや抗議の声が上がっています。しかし、どのような人に在留特別許可が付与されるかについて、法務省・入管庁はまだ正確な情報を明らかにしていないため、色々な憶測も飛び交っているのが現状と言えます。下記に少しばかり要点を整理させていただきます。

◎ 「日本で生まれ育った」という要件がある。例えばトルコで生まれて0歳で来日し、その後10年以上ずっと日本で育ってきた子は含まれないかもしれない。

◎ 「子ども」は現時点の小学生・中学生・高校生のみを指すとされる。幼稚園・保育園に通っている5歳以下の幼児や、18歳になったばかりの大学生は含まれないかもしれない。

◎ 「親に看過しがたい消極事情がある場合」は対象外とされる。具体的には、親に複数回の犯罪歴があったり、在留カードを偽造したことがあったりする場合とされている。

 以上のような機械的な線引きにより、きょうだい間、あるいは親族間で、在留資格を得られたり得られなかったりする残酷な差が生まれてしまうことが懸念されています。場合によっては肉親が離別させられる危機もあり得ると考えられます。

 物心つく前に離れた祖国の記憶もなく10年以上ずっと日本で育ってきたある子どもは、日本を「故郷」と思っていると言います。そこから追い出してしまうことは、子どもたちの育んできた可能性にふたをし、心の育ちに暗い影を落としかねません。私たちは子どもの最善の利益を守り切る社会でありたいと強く願います。

「川口芝クルド日本語教室」は、赤い羽根ポスト・コロナ(新型感染症)社会に向けた福祉活動応援キャンペーン「外国にルーツがある人々への支援活動応援助成」を受け、運営されています。

改めてご寄付をくださった皆さまに感謝を申し上げます。そして、この活動を丁寧に、息長く続けていくために、引き続いてのご寄付を下記より賜りますようお願い申し上げます。

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