「ハーフ」を「ネタ」にした動画を公開したお笑いタレント「土佐兄弟」への抗議声明

「ハーフ」を「ネタ」にした動画を公開したお笑いタレント「土佐兄弟」への抗議声明

 

私たちNPO法人メタノイアは、先日公開された、お笑いコンビ・土佐兄弟による「英語ができないハーフ」を「ネタ」として扱った動画における表現に全面的に抗議します。

「ハーフ」をはじめ、人の属性を切り取って揶揄し、「笑い」に変える表現は決して許されるものではありません。それは純粋な「笑い」ではなく、「嘲笑」であり、差別であり、多くの方々を深く傷付けるものです。

「ハーフ」がお笑いのネタにされたという事実、「英語ができないハーフ」「まぬけなハーフ」という表現に、心が傷付き、今この瞬間もざわざわした気持ち、居心地の悪さを感じている方が多くいると推察されます。

ミックスルーツの人々(両親のどちらかが外国人、両親共に外国人、国籍は日本だけれど外国で生まれ育った等多様な背景の方がいます)は、本件動画に限らず、日常的に人種差別的言動を受けながら生活しています。

見た目、肌の色、使う言語や日本語の言葉遣い、国籍やルーツのある国等々、様々な観点で「普通の日本人」と異なると判断され、それをあらゆる表現で指摘されます。

一人として同じ人間はおらず、それぞれが多様な個性を持ち合わせているというシンプルな事実も置き去りにされ、日々固定化されたステレオタイプに基づいたコミュニケーションを取られます。

一方的な「イメージ像」にあてはめられ、個人の本質的な部分に焦点をあててもらえない経験を繰り返すことで、当事者は存在を否定されたように感じ、自分自身でさえも自己を肯定しづらくなることがあります。ストレスが増大し、心身に支障をきたすこともあります。

そういった経験を日常的にしている人々を、社会的に影響力の大きいお笑いタレントが「ネタ」として扱うことは、当事者を苦しめるこの社会の在り方を追認し、社会の中でのミックスルーツの人々に対する差別を助長することにつながってしまいます。

コントの企画~公開まで、周囲に疑問を投げかける人が一人もいなかった(あるいは聞き入れられなかった)という点も含め、極めて残念であり、その罪はあまりに大きいと言わざるを得ません。

今後、「笑い」を盾に差別的表現が流布される事の無いよう、当該お笑いタレント「土佐兄弟」をはじめ、メディアに関わるあらゆる人々が、差別表現の根絶に向けて学び続けていくこと、再発防止策を講じることを求めます。

最後に、私たちNPO法人メタノイアは、本件に関連して傷付けられたすべての方々に連帯の意を表明します。

今、傷ついている人、言葉にならないモヤモヤを抱えている人、外に出ることに恐怖心を抱いている人、自信を喪失してしまった人、うんざりしている人、前を向いて生きようとしているのにその気持ちを阻害されてしまった人…色々な方々がいると思います。

そのような感情を抱くことは、間違っていません。こうして傷付けてしまうこの社会に責任があります。

 

忘れないでください。あなたは悪くありません。

どうか、自分自身の存在を否定しないでください。

私たちは、皆さんと共にあります。

 

2022年8月27日

NPO法人メタノイア

「ハーフ」と呼ばれる方々が、どのような思いを抱いて毎日を過ごしているのか。それをお知りいただくため、こちらの記事も併せてお読みいただければと思います。