人類社会は元来、人種、言語、文化、その他あらゆる要素において豊かな多様性をもっています。しかし、我々はそこに互いを隔てる分断の壁を築いてしまいました。国境線が引かれ、国籍がない人は生きる権利さえ保障されないことがあります。肌の色が違うだけで差別され命を脅かされる人もいます。多数者の使う言語が使えないことで、持って生まれた可能性を試すことさえ諦める子どもたちは数え切れません。人類社会の課題です。
日本国内に目をやれば、やはり隔ての壁が横たわっています。たとえば、技能実習制度においては、劣悪な労働環境の中、賃金の未払いや雇用主の暴力に耐えかね失踪する人が跡を絶ちません。あるいは、日本生まれであっても、在留資格を持たなかったため一度も学校に通わないまま大人になった子もいます。朝鮮学校においては、国からの補助金が削られ、生徒はヘイトスピーチの恐怖にさらされています。
私たちは、すべての、文字どおり「すべて」の人のいのちが、その人自身の幸せのために等しく扱われるべきであると信じています。国籍も、言語も、他のいかなるものもその妨げとなってはなりません。たとえ国が権利を保障しない制度的理由があったとしても、私たちはそれ以前に、一人の人間として、すべてのいのちを等しく大切にする世界に生きていたいのです。
人の多様性は、人と人を隔てる要因となるだけではありません。むしろ、豊かな可能性をもっています。私たちが出会ったフィリピン出身の子どもは家族を愛する大切さを教えてくれました。パキスタンから来た女性はイスラム教の習慣に出会わせてくれました。ガーナで育った青年はユニークで鮮やかな色彩の絵を描いて見せてくれました。
日本ではすでに300万人もの外国籍住民が暮らしています。18歳以下も30万人を越え、次世代が国内で育ってきています。最長5年で帰国を強制される技能実習生をまるで使い捨て労働力かのように手軽に利用しても、5年経てば日本にはほとんど何も残りません。むしろ、すでに定住している子どもたちがそれぞれの多様な可能性を最大限発揮できる環境を準備することの方に、私たちは希望を見出します。